スペルマンのほすぴすまいんど通信No6
2023年1月25日
♡今も変わらないホスピスマインド♡
この25年という年月の中で、ホスピス・緩和ケア病棟を取り巻く環境も大きく変わってきました。2011年までは緩和ケア病棟入院料は入院日数に依らず一律の包括支払だったことから、在宅療養や施設移行が困難な患者さんが、ある意味社会的入院として療養されていることも多く、中にはホスピスで3回目の誕生日を迎えられた、という方もいらっしゃいました。その当時はホスピスでの療養期間が約1~2ヶ月で、患者さんやご家族とほとんどのスタッフが関わることになり、それなりの信頼関係が生まれ、患者さんを中心に、ご家族のケアもできる時間がありました。
それが2012年度より入院日数によって漸減する包括支払となったことで、入院が長期になる患者さんには、施設への移行や一時的に退院していただくなど、療養環境を変更せざるを得ない状況となりました。しかしそれは、より多くの患者さんにホスピスを利用していただけることとなったということでもあります。
ホスピスは、終末期のがん患者さんにとっては終の棲家となります。最期の人生を送る場所として、私たちスタッフは苦痛少なく、快適に日常生活を送れるよう、お手伝いしています。お部屋は患者さんが愛用していたものを置いたり、ご家族の写真を飾ったり、ご自宅にいると同じような環境にしていいただいています。家族同様のペットの面会も許可していて、先日旅立ったSさんは、お元気だったときにはいつも一緒に過ごしていた愛犬の面会をいつも心待ちにしていました。愛犬と触れ合う時の何とも言えない穏やかな表情に、私たちも癒されていました。
また、私たちは、患者さんが大事にしていることを私たちも大事にする、という意識で関わっています。先日は、いつも作っていたケーキをお世話になっているスタッフに食べさせたい、という患者さんと一緒にチーズケーキを作る、という計画がありました。その当日は体調悪く、ご自身がキッチンに立つことはできませんでしたが、レシピを託されたスタッフが試行錯誤しながらも心を込めて作り上げ、味見していただいたところ、いつも自分が作る時と変わらない味、と喜んでくださいました。その様子に、私たちも心から喜びあいました。患者さんからいただいたレシピはスタッフに伝授され、いつか誰かがその味を再現してくれることでしょう。
ケアしている私たちも、実はケアされている、ということに気付かされることがたびたびあります。ドイツのことわざに、「ともに喜ぶのは二倍の喜び、ともに悲しむのは半分の悲しみ」という言葉があるそうです。患者さんに寄り添い、思いをともにすることで、私たちも一緒に喜んだり、落ち込んだりします。寄り添ってくれる誰かがいるということが、生きる力や癒しとなるのだと思います。
このように、私たちのホスピスは、開設当初から患者さんに寄り添うことを大切にしています。その思いが25年たっても変わらずに確実に受け継がれていることを実感しています。これからの25年も変わらない「ホスピスマインド」を患者さんにお届けできたらと願っています。
発行責任者 牛坂 朋美