追悼ミサが行われました/ボランティアさんへのインタビュー

11月

 秋晴れのさわやかな上旬に、カトリック東仙台教会で追悼ミサが行われました。当院はカトリックの病院でしたので、毎年死者に思いをはせる11月に追悼ミサを行なってきました。法人が変わった今でも、東仙台教会にご協力をいただいて、患者さんへ祈りを捧げるミサを開催しています。

 

 今年度は50名を超えるたくさんのご家族に参加していただきました。

 その後に病棟へご挨拶しにきてくださったご家族もいらっしゃり、患者さんの思い出話をしたり、スタッフとの再会を懐かしまれたりしました。

 緩和ケア病棟で患者さんと過ごしたひとつ一つの思い出や時間が、今でもご家族の支えになっていること、一緒に撮影した写真を今でもご自宅で飾っていることなどを改めて知ることができ、スタッフ一同も胸を打たれた1日でした。

 

 スタッフも時には、患者さんやご家族と一緒に撮った写真を見返したり、患者さんが残していってくれたぬいぐるみを屋上に連れ出したりして、患者さん、ご家族のことを思い出して語りあっています。今回はご参加されなかったご家族の皆さまにとっても、緩和ケア病棟での生活が少しでも支えになっていることを願ってやみません。

 

 

 今月より、当院緩和ケア病棟で活躍されているボランティアさんへのインタビューを不定期で掲載します。初回である今月は、ボランティアコーディネーターとしてご活動されている大山さんへインタビューを行いました。

 

【インタビュー】大山さんに聞く──ボランティアとの出会いと、いま大切にしていること

 2025年11月19日、当院ボランティアコーディネーター・大山さんに、これまでの歩みや活動への想いについてお話を伺いました。

きっかけは「ただ傍にいること」──ボランティアとの出会い

 大山さんがボランティアに関わり始めたのは、今から約15年前です。 当時エステティックの仕事をしており、その経験を活かせるボランティアを探していたことが最初のきっかけだったそうです。

「福祉関係の高齢者施設などでのマッサージの仕事を探している時に、スペルマン病院のホームページを見つけて訪ねてみたら、すぐに『お願いします』と言われて。最初は足のマッサージから始まりました」

 その後は、花のボランティア、デイサービスなど幅広い活動を経験され、傾聴ボランティアもするようになりました。

「認知症の患者さんでご家族がなかなか面会に来ることができない方でした。認知症とかあんまり詳しくなかったので、私で大丈夫なのかしら、傾聴の勉強もしたことないし、と思ってたんです。でも当時のボランティアコーディネータだったシスターから『大切なことは傍にいることなんです。ただ傍にいることなんです』と言われて。私にもできるのかなと思えました。」

 患者さんの傍で週に1回の傾聴を続けてくれた大山さん。

「一緒にDVDを見たり絵本の読み聞かせをしたり、クロスワードを解いたりするような時間を大切にしなきゃと思って。いろいろ考えて活動することがすごく楽しく、学びでした。」

 徐々にその患者さんの状態は変化されました。シスターから「大山さん、声かけてもらえますか」と声を掛けられたそうです。

「大山ですって声かけて、反応はなかったんですけど。そこから一時間しないで旅立たれたっていうので、私にとっては印象的な出来事だったんですね。」

 ボランティアで関わった患者さんとの経験が、大山さんにとってはとても印象に残りました。震災を経てボランティア活動をお休みした際、『神様のカルテ』という小説をたまたま読み、「もう少し本格的にこういう仕事がしたい」と、勉強のため福祉大学へ。ご自身のライフイベントも重なり大学はお辞めになりましたが、その経験を活かし大学病院でボランティアコーディネーターとして5年間勤務。今年度より当院で、今度はボランティアからボランティアコーディネーターとしてまた活動されることとなりました。

シスターからの学び

「またここに戻ってきて違う立場でコーディネーターとして働くということは私にとって意味があって、責任を感じながら現在働いています」

 ボランティアとして活動していた当時のコーディネーターであるシスターとの関わりで印象的だったこともお話しくださいました。

「たとえばここのデイルームでは音楽を流しながらティーサービスなどをしています。当時、喫茶店みたいな雰囲気ですてきだなって思ってニコニコしていたら、『大山さん今日何かいいことあったんですか』と言われました。私は『特にないんですけどここの雰囲気が良くて』と答えたら、『そうニコニコするのはとても良いことなんだけど、ここはやっぱり状態が苦しい患者さんとか色々なお気持ちを抱えたご家族の方がいらっしゃる場所だから。実際に旅立ちが近くなってる患者さんがいたりするので。』って言われました。そこですごくハッとして、私はここに何をしにきているんだろう、何をすべきかとか考えました」

「そういうお声がけを今は私は実際コーディネーターになって、ボランティアさんにできてるかなっていうか。ただこう楽しく活動していただくことだけではなくて、私が受けた学びとかも返せていけたらなと感じています。」

日常生活に息づくボランティアの視点

 現在は、ボランティアさんがスムーズに活動できるようサポートするのが大山さんの役割です。インタビュー当日はちょうどお花を生けるボランティアさんのための下準備をされていたところでした。

「お花を活けていただく下準備をしていました。お花屋さんから届く分だけでなく屋上からもとってきたりしています。屋上の花もボランティアさんが季節ごとにちゃんと花が途切れないように育ててくださっているんです。病院内でそういった循環がちゃんとできていることにも感心します」

 

 12月に向けてクリスマスツリーをボランティアさん方と準備してくれた大山さん。

 

スタッフとの関わり──“つなぐ”役割として

 ボランティア活動を円滑にするため、大山さんは多職種カンファレンスにも参加し、患者さんの情報を把握しています。

「体調が少し良くないとか、お花が好きな方ですとか、ご家族のことだったりとか、おおまかなことを知ってボランティアさんに伝えています。ボランティアさんが患者さんやご家族と関わりやすくなるような情報を伝えることができていて、看護師さんにも話しかけていただいたりして、関係性は良好だと思います。」

 看護師からはこんな声も寄せられています。

「大山さんのおかげで、私たちもボランティアさんと関わりやすくなっています」

これからの挑戦──地域に開かれたボランティアへ

 最近、園芸ボランティアの活動後にお茶を飲む時間があり、そのひとときがとても印象に残ったそうです。

「食べ物を持ち寄ったりお土産を渡しあったりしてなんでもない話をするんです。皆さんで世間話をして笑う楽しい時間を過ごせていて。そういった話をして笑う、行く場所がある、ということが薬以上というか。地域の方々が集まる場所としても、ボランティア活動を広げていきたいと思いました」

 当院の「地域から頼りにされる病院となる」という方針に沿ったボランティア活動の目標も語ってくださいました。

 一方で、ボランティアの高齢化や情報の発信についても課題です。

「こういう時代なので、専業主婦の方とかもなかなかいない。ボランティアできる方の平均年齢が70代くらいなんです。60代、70代、定年後の方がボランティアに関わっていただけるような仕組みを考えていこうとか思っています」

「ブログを見ているボランティアさんがほとんどいないんです。皆さんにみていただけるように発信していかないと。今はインスタの活用や、学生さんが参加しやすい工夫も必要ですね。」 

 今後は、より多くの方に情報が届くよう発信の方法も工夫していきたいとのことでした。

さいごに

 大山さんは当院のボランティアに参加されたことをきっかけにコーディネーターとしての道を歩まれています。また前任であるシスター細谷から受け継いだ思いや、今後の活動への希望も語ってくださりました。

 緩和ケア病棟ではたくさんのボランティアさんが活躍されています。これからもコーディネーターである大山さんとも協力しながら、患者さんの生活を支えていきたいと思います。

 

[ボランティアページリンク]

 https://spellman.or.jp/volunteer/