「思いを行動にすること」から始まったご縁
― 鈴木かおりさんインタビュー ―
鈴木かおりさんがスペルマン病院緩和ケア病棟と出会ったのは、学生時代のことでした。
「学生時代、栄養学の臨床実習でこちらの病院にお世話になったことが、このホスピス病棟との出会いでした。当時、シスターの講話や院内で活動されているボランティアの皆さんの存在がとても印象に残っています。他の医療機関ではあまり見られないケアのあり方や考え方に触れ、その経験は今でも心に深く残っています。」
特別な出来事があったわけではなく、「精神的なケアやスピリチュアルケアの大切さ」を肌で感じたことが、鈴木さんにとって忘れられない経験となったそうです。
現在は、ご自身のライフスタイルに合わせながら、月に1回のお茶会と、月1~2回開催されるピアノコンサートでのティーサービスを担当されています。
「思いを行動にする」ことの学び
ボランティア活動を通して、鈴木さんが大切にしているのは、「思いをどう形にするか」ということです。お茶会では、学生時代から親しんできた茶道の作法が役立つ場面もあるそうです。
「自分にできることや得意なことを見つけながら、それを活動の中で生かしていける。その“思いを行動にする”ということ自体が、私にとって大きな学びになっています」
思いを伝える方法は一つではありません。言葉で伝えることもあれば、行動で示すこともあり、空間づくりや作品を通して表現することもあります。
「表現の仕方はいろいろあって、そうした知恵や工夫をスタッフの皆さんやボランティアの先輩方から受け継いでいるような感覚があります」
また、病棟の中に日常の風を運ぶ存在として関わることの大切さも、活動を通して実感しているといいます。
循環する癒し
活動を終えて帰る頃には、「自分自身が元気になっている」と感じることも少なくないといいます。
「患者様のためにと思って関わっていることも、実は私たちのほうがたくさんの想いを受け取っているんです。エネルギーが循環しているように感じます」
患者様やご家族、スタッフ、そしてボランティア。それぞれが互いを思いやる気持ちが重なり合い、あたたかな循環を生み出しています。
「互いに想い、支え合う気持ちのあたたかい循環があるからこそ、この活動が長く続いているのだと思います」
ホスピスの開設当初から10年、20年と活動を続けているボランティアが多い背景には、こうした思いやりの文化がしっかりと根づいていることを、鈴木さんは実感しています。
一期一会の時間を、共に味わう
患者様やご家族とともにデイルームや病室で過ごし、季節の移ろいを感じたり、花を眺めたり、昔の思い出に耳を傾けたり。普段の暮らしの中では見過ごしてしまいがちな何気ないひとときも、ここではかけがえのない時間となります。
「お一人おひとりに流れる時間を、共に過ごさせていただけることを大切にしたいと思っています。日常の小さな出来事の中にも、たくさんの喜びがあることを、この活動を通して私自身が気づかせていただいています」
支え合い、学び合うボランティアという在り方
鈴木さんが前ボランティアコーディネーターのシスターから教わったのは、「まず、自分自身の心と身体を整えること」の大切さでした。
無理をせず、互いに声をかけ合い、必要なときには自然に支え合う。その姿勢が、長く活動を続けるための土台になっています。
「ボランティア、ボランティアコーディネーター、そして医療スタッフが、それぞれの思いや気づきを共有しながら活動しています。互いに声をかけ合い、支え合い、活動を通して学び合える。このようなチームワークと体制に支えられているからこそ、楽しく、やりがいを感じながら活動を続けることができています」
これからも、気持ちを一つに
「これまでと同じように、患者様やスタッフの皆さんと気持ちを一つにして関わっていきたいと思っています」
鈴木さんは、このホスピスで学んだ医療の在り方やケアの姿勢は、今の時代だからこそ、より大切な意味を持つと感じています。
「病気のあり方もさまざまに変わり、在宅で過ごされる方も増えています。だからこそ、家庭的な雰囲気の中で、ご家族がいつもそばに寄り添い、ご本人らしい時間を大切に過ごせる環境づくりが、これからますます求められていくのではないかと思います」
これまで受け継がれてきた思いや文化を、次の世代へつないでいくことも大切にしたいと話します。
「歴代の先輩方が築いてこられたものを大切にしながら、このホスピスの良さがこれからも続き、一つのモデルとして広がっていくといいなと思っています。ここでの活動や考え方は、病院だけでなく、さまざまな場で生かせるものだと思います。皆がより良くなるように、一緒に考え、関わっていく。その中で、一人ひとりが自分にできる役割を見つけ、社会とつながっていける。私自身も、この活動を通して責任感や、その大切さを実感するようになりました」
鈴木さんが活動を通して育んできた思いや学びは、病院という枠を越え、地域や社会にもつながるものです。一人ひとりが無理のない形で関わり、それぞれのできることを持ち寄ることで、人と人とのあたたかなつながりが生まれ、日常の風が通う場が育まれていく。その積み重ねが、医療現場を、そして社会をより豊かにしていく——。そんな未来への願いが、鈴木さんの言葉から静かに伝わってきました。

